そっと見守ることも必要

ふだん愛犬をドッグランに連れて行くことはめったにない私ですが、友人たちに誘われてドッグランを貸し切り、当時6ヵ月齢の『アトラス』を連れて行きました。

アトラスは友人の愛犬『ジーコ』が気になるようで、一生懸命遊びに誘っていました。でも、怖がりのジーコは腰が引けて、アトラスがちょっと追い回すとお腹を出してじっとしてしまいます。そこヘジャック・ラッセルーテリアがやってきてジーコを追いかけ始めました。ジーコがお腹を出しても降参してもあきらめずに、しつこくニオイを嗅いだり、前足で引っかいたりしています。

するとジーコは飼い主さんの足下に逃げ込みました。すぐにひょいと抱き上げて助ける飼い主さん。子犬のころからそんなふうにしてきたのだと思いますが、そのことが、もともと臆病そうなジーコがはかの犬と遊ぶことを覚える機会を奪ってしまった可能性がありました。

生まれつき怖がりな性質で、極度に怖がっているような場合には、飼い主さんの助けが必要なときもあります。でもジーコの様子を見ていると、子犬のころにもっと上手に慣らしてあげられたらもっと遊べるようになったのではないかと感じました。

怖がりな子犬は、まずは怖がりな子犬同士か、しつこくしすぎず遊ぶのが上手な子犬や成犬と一緒に遊ばせると慣れるのが早くなります。心配だとは思いますが、できるだけ手を貸さないで見守ってやってください。

以前、「先住犬が子犬をいじめるので困っている」という相談でご自宅に悁ったケースがありました。実際にその2頭を遊ばせてみると、ほんの少し接しただけで飼い主さんが子犬を抱き上げてしまうのです。なぜ抱き上げたのか理由を聞いてみると、「今、先住犬が耳を噛んだので、傷がないか確認しようと思って」とのこと。でも先住犬は、子犬に対して甘噛みをしていただけでした。

口を使って噛みついて遊ぶのが犬のやりかたです。どう見ても犬たちはただじやれているだけでした。この程度でびっくりしてしまう飼い主さんもいるんだ、ということでとても勉強になったケ-スでもありました。

わが家ではアトラスが子犬のころ、プロレス遊びをしているときにたびたび悲鳴を上げることがありましたが、成犬になってからはありません。あれは彼の学習期だったのだと思いますが、ただ一度だけ仲裁したことがありました。

『アクセル』がアトラスに噛みついて。アトラスの悲鳴がいつもより大きかったので止めたのです。止めた理由は、アトラスの悲鳴というよりは、アクセルが珍しくイライラしているように感じたからでした。仲裁した後、アクセルを静かに抱いて落ち着かせました。その後は、遊びのなかでアトラスが悲鳴を上げたことは一度もありません。

犬たちの様子を観察せず、あまり過保護に助けてしまうと「悲鳴を上げたら助けてもらえる」と学習することもあり、何ということもないのに大げさに悲鳴を上げるようになって、それが社会化の妨げになることがあります。

ドックランで出会ったジーコは、飼い主さんに対する依存が少々強く、またかなりの。演技派・だったので、まず飼い主さんには犬との正しい関係を作るベースプログラムを実施してもらいました。

ジーコはまだ1歳と若かったので、「元気すぎない犬友達」を誘ってドッグランを貸し切り、飼い主さんにはできるだけ助けずに見守るようお願いしました。その後は、根気よくドッグランに通ったことと犬友達の協力のおかげで、ジーコはだいぶほかの犬とも遊べるようになったそうです。

今でも元気すぎる犬は苦手なようですが、苦手な犬と無理やり仲良くしなければならない必要なんてないと思います。ちなみに私は、苦手な人とは一緒にいたくないですね(笑)。